2020年11月現在、入手可能なMass++には4バージョンが存在します。以下にその違いについて簡単に要約します。 

 

Ver.2.7.4(島津製作所・エーザイ開発)は、公的研究費を受けて開発された、(今のところ)最後のバージョンで、クローズドソースです。 

 

Ver.2.7.5は、Ver.2.7.4のオープンソース版です。この段階で、 

  • 質量分析計ベンダー固有のファイル形式(生データ)のRead機能 
  • 公的研究費を受けている間に取得されたソフトウェア特許に関連する機能 

が削除されました。 

この両者の具体的な差異は、OSDNのページをご参照ください。この表で「Binary Edition」となっているのが「Ver.2.7.4」、「OSS Edition」となっているのが「Ver.2.7.5」を意味します。

 

なお、Microsoftによる開発用ライブラリの配布が終了したため、これらのバージョンの改良・bug fixなどは今後実施できません。 

 

Ver.4は、新規コンセプトに基づいて書き直している開発中バージョンです。2020年11月現在、Ver.4Alpha(α)とVer.4Beta(β)の2つのバージョンが公開されています。Ver.4BetaではAlphaに対して、バグ修正のほか、機能が追加されています。これらの機能の差は以下のとおりです: 

 

機能

Ver.4Alpha 

Ver.4Beta 

TIC表示 

 

 

XIC表示 

 

 

MS1 スペクトル表示 

 

 

 MS/MS スペクトル表示 

 

 

2D-heatmap表示 

 

 

3D-heatmap表示 

 

 

スペクトル・クロマトグラムのmirror view 表示 

 

 

スペクトル・クロマトグラムのオーバーラップ表示 

 

 

外部プログラム実行・データ交換 (*) 

(なし)  

 

データへのアノテーション表示 (**) 

✓(手動操作) 

 

対応ファイル形式 

mzML, MGF,  
pepXML(手動でのファイルオープンのみ) 

mzML, MGF,  
pepXML(検索完了後に自動でファイルオープン) 

対応ピーク検出プログラム 

(なし) 

ProteoWizard ver. 3.0.20123    
[Windows版のみの機能] 

ペプチド同定用に対応する検索エンジン 

なし 

Comet ver. 2019.01 rev. 5 
[Windows 版のみの機能] 

動作OS 

Windows, macOS 

Windows, macOS, Linux Debian/Ubuntu, Linux RPM 

(*) …. ユーザは、外部プログラムにパラメータを設定した上で、自動で外部プログラムから結果を取得し、その結果を他の外部プログラムに入力することができます。 

(応用例) 

ProteoWizardのMSConvertを用いてmzML形式データからピークし、Mascot Generic Format (MGF)形式のMS/MSピークリストファイルを生成する。このピークリストは自動的にMass++に読み込まれる。このピークリストを検索エンジンのCometに入力して配列データベースを検索し、検索結果を pepXML 形式ファイルに出力する。 

 

(**) …. (応用例) 

トップパネルの”project”タブでペプチド同定結果を指定し、対応する質量ピークを2Dまたは3Dヒートマップ上でマークする。 

(別の応用例 ) 

 指定されたペプチドに対応するプレカーサーイオンのXICを表示する。